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津田寛治の「KANJIて福井」

プロフィール

津田寛治(つだかんじ)

1965年福井市生まれ。大東中学校、福井高校を経て映画俳優の道を目指し上京。アルバイト先の喫茶店に訪れた北野武に売り込み、1993年『ソナチネ』で映画デビュー。翌年の竹中直人監督作品『119』には森下寛役として出演。その後映画を中心に活動を続け、2002年『模倣犯』、『劇場版 仮面ライダー龍騎 EPISODE FINAL』、『Dolls』と合わせて第45回ブルーリボン賞助演男優賞を受賞。2012年にはTBS系ドラマ『運命の人』、フジテレビ系ドラマ『リーガル・ハイ』などにも出演。

これは福井出身の俳優・津田寛治さんがあるきっかけを通じて、念願であった福井を舞台とした映画製作に取り組みながら、その中で感じた“福井”、自身の記憶の中の“福井”をつづっていくエッセイです。

ありがとう、福井ショッピングプラザ。

 2011年10月下旬。
 福井ショッピングプラザの屋根を豪雨が叩きつけている。凄い音だ。その古いアーケードの下に作られた小さな特設会場の壇上に僕は座っていた。僕の横には長岡映画製作委員会の渡辺千雅さん、その横には京都工芸繊維大学教授の中川理さん、福井工業大学准教授の木川剛志さん、そして福井街角放送の鳴尾健さんといったメンバーで、福井駅前のこれからの展望を見通した都市作りについてのシンポジウムが開催されている。司会も兼ねた鳴尾さんが福井駅前の歴史を語っていたが、雨の音でほとんど聞き取れない。そして僕たちの頭上には雨漏りのしずくが定期的に垂れてくる。その雨だれをよけながら上を見上げると懐かしい天井が目に入った。子供の頃にも見上げた天井。
 福井ショッピングプラザと名のついた、このエル字型の短いアーケードは僕が物心ついた時からそこにあった。親に連れられ駅前で買い物をするのが何よりの楽しみだったあの頃、駅ビルの前の駐車場に車を停め、母と父の手を握りながら入っていくショッピングプラザは、決して大げさではなく夢の世界への入り口だった。かがみ屋があり、ひまわり書店があり、小奇麗なレストランがあり、そこを抜けると華やかな電車通り。エンジとクリーム色の素敵な路面電車が走っている。ショッピングプラザはいつも人で溢れていて、幸せそうな人々の緩い歩みに流されながら、幼い僕はニヤついた顔でアーケードの高い天井を見上げたものだ。
 その福井ショッピングプラザもかなり年をとった。新しくなった福井駅との対比でさらに古く感じる。後数年には取り壊されるらしい。身の危険すら感じるこの老朽化では致仕方ないが、やはり寂しさに胸が締めつけられる。さよなら福井ショッピングプラザ。そしてありがとう福井ショッピングプラザ。
「津田さんは、その点についてはどう思われますか?」という鳴尾さんの質問で我に返った。そうだ俺は今、福井駅前の活性化を踏まえた次世代の都市生活の在り方という自分のハードルをはるかに越えたシンポジウムに参加しているのだった。「何がですか?」という、かなりKYな切り返しをしてしまった僕のせいで壇上の空気が一瞬硬くなる。笑い声が聞こえたので客席を見ると、それは僕を笑ったものではなく、後ろの席で車座になり勝手に盛り上がっているガラの悪い一部の客から聞こえていた。知った顔の連中だ。久しぶりに帰郷した僕を応援するために駆けつけてくれた高校の同級生達だった。応援とは名ばかりで、みんなビール片手に昔話に花を咲かせている。あいつら……、学生ん時からちっとも変わってえんなあ(福井弁)……。僕らの教室で教壇に立っていた先生の気持ちが今更ながらよく分かる。二つ隣に座っている木川さんが、大きな体をゆすりながら髪がはりついたおでこの汗をハンカチで拭い、優しい笑顔を僕に向けていた。「大丈夫、マイフレンド」といった感じで。 (つづく)

福井駅前にあったアーケード街「福井ショッピングプラザ」。
現在は福井駅前西口再開発が進められて取り壊されている



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